【日日是好日・森下典子】その時その時でしか感じられないこと、見えない世界がある。
今回の本 「日々是好日」〜お茶が教えてくれた15の幸せ〜
森下 典子 新潮社 2008-10-28 売り上げランキング : 28
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すると、ある日突然雨が生ぬるく匂い始めた。
「あ、夕立がくる。」と、思った。
庭木を叩く雨粒が今までとは違う音に聞こえた。
その直後あたりにムウッと土の匂いがたちこめた。
それまでは、雨は「空から落ちてくる水」でしかなくて、匂いなどなかった。
土の匂いもしなかった。
私はガラス瓶の中から外を眺めいているようなものだった。
なぜ、こんな手順でやらなければいけないのだろう。
なぜ、この単調な繰り返しをやらなければいけないのだろう。
そう思って仕事をしていたら、
体に染み付き始めある日突然、
見える景色が変わる。
そんな経験はないだろうか。
僕は、仕事絡みで思いついたアイデアは
ひたすら、icloudのメモに殴り書きすることにしているのだが、
ほんの1−2年前にとても価値のあるように思えたアイデアが、
今見ると、とても精度のあまいものに思えることがある。
昔悩んでいた問題も、
今同じことと遭遇してもそつなくこなせてしまう。
その間に自分でも気が付かないうちに、
一滴一滴コップに水が溜まっていたのだ。
コップがいっぱいになるまでは、なんの変化もおこらない。
やがていっぱいになって、表面張力で盛り上がった水面に、
ある日ある時近郊をやぶる一滴が落ちる。
そのとたんに一気に水がコップの縁を流れ落ちたのだ。
いわゆるルーティンにも同じような意味があるのだろう。
他人から見ると不思議に思われる同じ動作の繰り返しが、
己の心に問いかけ膨大な繰り返しから導き出された、
無意識に最適な動作を引き出すきっかけになる。
「やめる」「やめない」なんて、どうでもいいのだ。
それは「イエス」か「ノー」か、とはちがう。
ただ、「やめるまでやめないでいる」
それでいいのだ。
ただこのままでよい、ということが腹落ちすると人生は、
驚くほど開けてくる。自分以外の何者かになる必要なんてない。
自分は自分なのだから。
人にはどんなにわかろうとあがいたところで、
その時がくるまでわからないものがあるのだ。
僕はこの先、どうあるべきなのだろう。
そう問いかけながら自分を自分と認めていきていくのも面白い。
参考
森下 典子 新潮社 2008-10-28 売り上げランキング : 28
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- 文庫: 252ページ:約15万字:約110分
映画化を期に文庫本化されていたのを知らず、
もう10年も前の本だとは読んでいる間は
全く気が付かなかった。
人の心のあり方は昔から変わっていないんだなと、
改めて痛感。